離婚時年金分割制度の落とし穴
離婚時年金分割は、夫婦が受給可能な総額から分割される制度ではありません。多い方からの差額分を半分にして、そのままもらえるわけではないという点に落とし穴があります。
まず制度が適用される部分についてですが、基礎年金を除いた厚生や共済の標準報酬部分です。ですから、夫婦の片方が多くもらえる状況であっても、自営業等で加入していない場合は全く適用されない制度ということが分かります。
また、受給年齢に達していないのであれば直ぐに差額を受け取れるわけではない点も踏まえておく必要があります。差額分は多くの場合、考えていたより少ない金額となることが多いので離婚時年金分割の落とし穴として認識しておきましょう。
分割については、2つ方法に分かれています。1つは合意分割と呼ばれるもので、婚姻期間の差額分について最大半分まで分割が可能という仕組みです。割合をどうするかは夫婦で話し合う必要があり、お互いが納得できないのであれば裁判で決めることになります。
もう1つは、3号分割と呼ばれるもので、専業主婦といった第3号被保険者が利用できる仕組みです。扶養者側の意志に関係なく年金を分割し受け取ることが可能です。共働きの期間があると使えない仕組みなので、利用する場合は内容を良く確認しておきましょう。
離婚時年金分割をすれば夫の年金の半分が貰えるわけではない
離婚時年金分割を利用して妻が夫から年金を受け取る場合、その総額の半分を受け取ることができるわけではありません。
具体的な例を踏まえて考えると、例えば夫が25歳の時に結婚して50歳の時に離婚した場合、分割の対象になるのは婚姻期間に支払われた保険料についてのみです。つまり、夫が20歳から24歳まで支払っていた分については、計算される対象に入りません。
また基礎年金部分も対象外で、厚生年金部分のみが対象になります。受給額の総額から考えていると、離婚時年金分割でもらえる金額はそこまで高くないので、離婚後の生活費としてはあまりあてにしないほうが良いかもしれません。
分割する割合に関しても合意分割制度を利用する場合は、最大で半分までしか分割できない点も留意しておきましょう。夫との話し合いの結果次第では、半分以下になるケースもあるということです。
財産分与や慰謝料と同じく、離婚条件の一つとして分割について決めることになりますが、話し合いがうまくいかないと裁判にまでもつれ込みます。離婚した後のことを考えると、少しでも多くの金額を得られるようにしたい所ですから、弁護士への相談も考えておくと良いかもしれません。