令和3年7月事務所だより
緊急事態宣言下でも企業の約37%が正社員不足
~帝国データバンク調査から
帝国データバンクが、2021年4月に調査した「人手不足に対する企業の動向調査」の結果を発表しました(調査対象は全国2万3,707 社、有効回答企業数1万1,003 社(回答率 46.4%))。
まん延防止等重点措置の適用と3回目の緊急事態宣言が出された時期ですが、依然として雇用継続に苦慮している企業がある一方で、堅調な回復から人手が不足している企業もあり、企業の動向に二極化が表れていることがわかりました。
正社員の「不足」は37.2%。前年同月より増加も2年前と比較すると大幅に低下
正社員が不足していると答えた企業は37.2%(前年同月比6.2 ポイント増、2年前比 13.1ポイント減)でした。1回目の緊急事態宣言の最中であった1年前と比べると人手不足割合は増加しているものの、新型コロナウイルスの影響を受けていない2年前からは 10 ポイント以上下回っています。
業種別では、「メンテナンス・警備・検査」と「教育サービス」(ともに 55.6%)が最も高いという結果でした。以下、「建設」(54.5%)、「情報サービス」(54.1%)、「農・林・水産」(53.5%)、「自動車・同部品小売」(50.0%)が5割台の上位で続いています。
非正社員の「不足」は 20.6%。業種では「飲食店」が唯一5割
非正社員が不足していると答えた企業は、20.6%(前年同月比4.0 ポイント増、2年前比11.2 ポイント減)でした。業種別では、「飲食店」が50.0%と唯一の5割台でしたが、2年前(78.6%)と比較すると、人手不足の割合は大幅に低下していることがわかります。次いで、「教育サービス」(46.2%)、「各種商品小売」(45.2%)、「メンテナンス・警備・検査」(42.8%)が4割台で続きました。
抜本的対策を講じなければ、人手不足は再拡大の傾向
正社員の人手不足割合は前年同月より6.2ポイントの増加がみられたものの、新型コロナの影響を受けていない2年前と比べると、10ポイント以上下回っています。この傾向は、非正社員や企業規模別でみても同様の傾向で、企業における人手不足感は高まっているものの、新型コロナ以前と比較すると緩和状態が続いています。
ただ、逆に言えば新型コロナという非常事態によって人手不足は大きく低下したにもかかわらず、この調査からは依然人手不足感をもっている企業は多いという結果がわかり、抜本的な解決策を講じなければすぐにこの傾向は高まってしまうことにつながります。調査結果の分析でも、今からそれに備えた対策、対応を検討していく必要があるとしています。
【帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2021 年 4 月)」PDF】
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p210506.pdf
男性の育児参加で注目される「ペア休」って何だ?
「ワンオペ育児」に対する問題意識の高まり
令和元年度の厚生労働省の調査では、女性の育児休業取得率83%に対し男性は7.48%と、大きな差があります。こうした差が、女性が出産・育児を理由に退職したりする原因になったり、母親に家事・育児の負担が偏る、いわゆる「ワンオペ育児」を発生させたりしているといわれます。
育児参加を望む男性の割合は?
一方、ゼネラルリサーチ株式会社が2019年3月に20~40代男女を対象に実施したアンケート調査では、男性の育休取得について57.4%が「許されるなら取得したい」と回答しています。さらに、コロナ禍により共働きの夫婦がともに自宅でテレワークを行う機会が増えたこともあり、以前にもまして育児に参加したいと考える男性が増えています。
「ペア休」とは
このような変化を受け、共働きの父親と母親が一緒に育児休業を取る「ペア休」が、最近注目されています。
これは、「パパ・ママ育休プラス」という制度により、父親と母親で時期をずらして育児休業を取得し、子どもが1歳2カ月になるまで休業期間を延長するというものです。
ペア休経験者によれば、育児休業に入る前から職場で仕事を分担し、互いに支え合う雰囲気が生まれ、育児休業中の家事・育児の負担を分担できたことで気持ちに余裕が持てた、などの効果を実感できたという声があります。
改正育児・介護休業法では男性育休制度も創設
今国会で成立した改正育児・介護休業法では、男性の育児休業取得促進のため、子の出生直後に取得できる、新しい育児休業制度も設けられました。新制度は、2回までの分割取得が可能で、労使協定を締結し、労働者と事業主が個別に同意している場合には休業中の就業も一定程度可能とするなど、柔軟な制度となっています。
詳細は今後省令等において明らかにされ、令和3年6月9日から1年6月を超えない範囲内で政令で定める日より施行されます。企業において改正対応を検討するタイミングはまだ少し先となりますが、昨今の変化を踏まえると、今から育児休業を取得しやすい環境を整備しておくことは、若手人材の募集や定着を促す意味でも、効果が期待できそうです。
リモート採用の実態
~人材サービス最新調査データ(マンパワーグループ)より
リモート採用について調査結果公表
今年もコロナ禍での採用活動が始まりを迎えるなか、オンラインでの会社説明会や面接選考を行う企業は増加傾向にあります。対面とは違った新しい形式での採用活動に戸惑う人事担当者も多いことでしょう。
そこでマンパワーグループが、企業の人事担当者を務める20代~50代の男女400名を対象に、「リモート採用の導入と活用の実態」を調査した結果を公表しました。この調査では、すでにリモート採用を導入・活用している人事担当者のリアルな声を紹介しています(調査時期:2021年1月)。
◆結果の概要
リモート採用の導入率
従業員規模別でみると、「100人以下」の企業は18.7%、「101~500人以下」で39.7%、「501人以上」で61.0%。全体で4割以上の企業がリモート採用を導入しており、従業員が多い企業ほど、リモート採用の割合も多い傾向がみられます。
リモート採用の導入時期
全体でみると、「コロナ前に導入」が16.2%、「コロナ契機で導入」が28.4%、「コロナ契機で導入検討」が15.1%。従業員101人以上の企業では、検討も含め、半数以上がコロナきっかけで導入にシフトしていることがわかります。
リモート採用の内容
「採用面接」が83.5%、「説明会」75.0%と多く、次いで、「適正検査」48.8%、「内定者フォロー」48.2%と、オンラインを活用して一連の採用実務を行っていることがうかがえます。
リモート採用導入のメリットとデメリット
「採用業務の負担軽減」(65.2%)、「応募者の負担減」(65.2%)、「採用の時間効率が上がる」(56.1%)が上位を占め、一方で課題や問題点として挙げられたのが、「人物像がつかみにくい」が約半数(51.5%)という結果となっています。
結果からみえる課題
リモート採用を導入することによって、担当者の業務負担や応募者の移動負担が軽減される反面、応募者の人となりや立ち居振る舞いなどがわかりづらいという課題は残ります。
ワクチンの普及で経済活動が戻ってきたとしても、リモート採用は、海外や国内遠方地の応募者とのやりとりには欠かせないツールであることは間違いありません。今後は、対面とリモートを並行して活用するうえでも、こうした課題をクリアできる工夫が求められます。
【マンパワーグループ「人材サービス最新情報調査データ」】
https://www.manpowergroup.jp/client/jinji/surveydata/20210602.html
新型コロナワクチンの職域接種と労働時間の取扱い
新型コロナワクチンの接種を加速化するため、企業や大学での「職域接種」が6月21日から可能とされ、6月8日から申請の受付が開始されています。一部の企業や大学では職域接種を実施するとの報道もされています。
職域接種の概要
職域接種は自治体からの接種券が届く前でも可能ですが、会場や人員は企業等が自ら確保しなければなりません。実施形態としては、企業単独実施のほか、中小企業が商工会議所等を通じての共同実施、下請け企業、取引先を対象に含めての実施などがあります。
企業や大学に求められる主な実施要件は、以下のとおりです。
(1) 医師・看護師等の医療職のほか、会場運営のスタッフ等、必要な人員を企業や大学等が自ら確保すること。また、副反応報告などの必要な対応を行うことができること。
(2) 接種場所・動線等の確保についても企業や大学等が自ら確保すること。
(3) 社内連絡体制・対外調整役を確保すること(事務局を設置すること)。
(4) 同一の接種会場で2回接種を完了すること、最低2,000回(1,000人×2回接種)程度の接種を行うことを基本とする。
(5) ワクチンの納品先の事業所でワクチンを保管の上、接種すること。
ワクチン接種に関する休暇や労働時間の取扱い
ワクチン接種自体は業務ではありませんが、接種に費やす時間や副反応が出た場合の労働時間や休暇の取扱いが気になるところです。厚生労働省の見解は以下のとおりです。
「職場における感染防止対策の観点からも、労働者の方が安心して新型コロナワクチンの接種を受けられるよう、ワクチンの接種や、接種後に労働者が体調を崩した場合などに活用できる休暇制度等を設けていただくなどの対応は望ましいものです。
また、
①ワクチン接種や、接種後に副反応が発生した場合の療養などの場面に活用できる休暇制度を新設することや、既存の病気休暇や失効年休積立制度(失効した年次有給休暇を積み立てて、病気で療養する場合等に使えるようにする制度)等をこれらの場面にも活用できるよう見直すこと
②特段のペナルティなく労働者の中抜け(ワクチン接種の時間につき、労務から離れることを認め、その分終業時刻の繰り下げを行うことなど)や出勤みなし(ワクチン接種の時間につき、労務から離れることを認めた上で、その時間は通常どおり労働したものとして取り扱うこと)
を認めることなどは、労働者が任意に利用できるものである限り、ワクチン接種を受けやすい環境の整備に適うものであり、一般的には、労働者にとって不利益なものではなく、合理的であると考えられることから、就業規則の変更を伴う場合であっても、変更後の就業規則を周知することで効力が発生するものと考えられます(※)。
こうした対応に当たっては、新型コロナワクチンの接種を希望する労働者にとって活用しやすいものになるよう、労働者の希望や意向も踏まえて御検討いただくことが重要です。
※常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合、就業規則の変更手続も必要です。」
【厚生労働省「職域接種に関するお知らせ」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_shokuiki.html
【厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
同一労働同一賃金関連の労組事案が増加
~令和2年 労使間の交渉等に関する実態調査より
非正規社員において組合加入資格がある労働組合の割合が上昇
厚生労働省が、令和2年「労使間の交渉等に関する実態調査」結果(有効回答3,335組合。組合員30人以上の労働組合で、令和2年6月30日現在の状況等について調査)を公表しました。
同調査によれば、事業所に正社員以外の労働者がいる労働組合について、労働者の種類別に「組合加入資格がある」 をみると、「パートタイム労働者」38.2%(平成30年調査35.6%)、「有期契約労働者」41.4%(同39.9%)、「嘱託労働者」37.4%(同35.6%)、「派遣労働者」6.1%(同5.2%)となっており、非正規社員に組合加入資格がある労働組合の割合が上昇していることがわかりました。
「同一労働同一賃金に関する事項」の話合いを持った組合が増加
過去1年間(令和元年7月1日~令和2年6月30日)に、正社員以外の労働者に関して使用者側と話合いが持たれた事項(複数回答)をみると、「同一労働同一賃金に関する事項」40.5% (平成30年調査15.4%)が最も高く、次いで「正社員以外の労働者(派遣労働者を除く)の労働条件」38.3%(同38.9%)、「正社員以外の労働者(派遣労働者を含む)の正社員への登用制度」 23.8%(同24.4%)などとなっています。
働き方改革関連法による「同一労働同一賃金」が、本年4月から中小企業にも全面適用されました。今後も「同一労働同一賃金」について話合いが持たれるケースは増えることが予想され、企業としても相応の対応が必要になるものと考えられます。
法改正への対応も
過去3年間(平成29年7月1日~令和2年6月30日)において、「何らかの労使間の交渉があった」事項をみると、「賃金・退職給付に関する事項」74.9%(平成29年調査73.9%)、「労働時間・休日・休暇に関する事項」74.1%(同72.2%)、「雇用・人事に関する事項」61.0%(同60.2%) などとなっており、労使間の交渉の結果、労働協約の改定または新設がされた事項(複数回答)は、「育児休業制度、介護休業制度、看護休暇制度」37.5%(前回39.9%)、「賃金額」37.1%(同 36.0%)、「賃金制度」33.3%(同 34.3%)となっています。
今国会で育児・介護休業法の改正法が成立したこともあり、育児・介護休業制度などは今後も見直しが予定される分野です。法改正の動きも注視しながら、企業としても早めに対応を検討していきたいところです。
【厚生労働省「令和2年 労使間の交渉等に関する実態調査」】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/18-r02.html
コロナ対策で注目、「昼休みの時差取得」
「昼休みの時差取得」とは
令和3年5月に「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(新型コロナウイルス感染症対策本部決定)が改正され、感染防止のための取組みに「昼休みの時差取得」が追加されました。昼休みを一斉に取得した場合、休憩室や更衣室、喫煙室やエレベーター、近隣店舗などに人が集中し、感染リスクが高まる可能性があります。これを抑制するために、昼休みの時間をずらして取得してもらうという取組みです。
手続き上の留意点
労働基準法では、休憩時間は労働者に一斉に与えなければならないこととされており、昼休みを時差取得とする場合には、労使協定を締結して、①対象者の範囲、②新たな昼休みの時間の2点を取り決めなければなりません。労働者の意向などもよく確認しながら、職場の実情に応じて取り決めることが重要とされています。
※労使協定は、過半数労働組合または過半数代表者と書面で締結する必要があります。
※以下の業種については、一斉休憩の規定は適用されていません。
①運輸交通業、②商業、③金融・広告業、④映画・演劇業、⑤通信業、⑥保健衛生業、⑦接客娯楽業、⑧官公署(現業部門を除く)
※常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合、就業規則の変更手続も必要です。
労使で話し合い、理解を求める
感染症対策に有効な昼休みの時差取得ですが、導入を検討する際には、そもそもなぜ休憩時間の一斉付与が原則とされているのか、労使ともに理解しておくべきでしょう。
働いている同僚を気にして休憩を早めに切り上げたり、ずらして取得している休憩時間中に取引先に対応する、あるいは休憩時間を取り過ぎるといったことがないよう、労使で導入・運用について意向を擦り合わせながら、効果的かつ適切な感染症対策をすることが望まれます。
【厚生労働省「基本的対処方針の改正等を踏まえた、職場における新型コロナウイルス感染症対策の拡充について、経済団体などに協力を依頼しました」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18659.html
シニア人材の処遇の不透明さは若手社員の流出につながる
~パーソル総合研究所の調査から
法令対応以外にも重要なことがある
改正高年齢者雇用安定法が4月1日に施行されました。従業員の70歳までの就業確保を努力義務とする規定が盛り込まれています。法令への対応は当然すべきことですが、パーソル総合研究所が行ったシニア人材の就業実態や就業意識に関する調査からは、法令対応以外の会社の対応も、経営にとって重要であることがわかります。
定年後再雇用後の年収の変化、職務の変化
定年後再雇用により、約9割の人が定年前より年収が下がっており、「50%より下がった」との回答が27.6%で最多、平均では44.3%の低下となっています。職務の変化については、再雇用者全体(フルタイム・パートタイム・嘱託)では、次のようになっており、いずれの雇用形態でもおおむね似た傾向です。
●定年前とほぼ同様:55.0%
●定年前と同様だが業務範囲・責任が縮小:27.9%
●定年前と関連するが異なる職務:8.1%
●定年前とは全く異なる職務:9.0%
シニア人材のモチベーションを考えるうえで参考にしたいデータです。
シニア人材に対する会社の対応が若手社員に与える影響
調査結果からは、若い世代ほど、シニア人材は「給料をもらいすぎだ」「成果以上に評価されている」と感じており(いずれも20代社員では約3割)、不公平感を抱いています。
また、シニア人材の役割や仕事を明確にしていなかったり、シニア人材が孤立しているような会社では、転職意向を持つ若手社員が、そうでない会社に比べて2倍以上多いようです。この傾向は、20代、30代、40代のどの年齢層でも同様です。シニア人材の処遇が不透明なことが、人材流出の大きな要因となることがわかります。
シニア人材への教育・研修が不十分
シニア人材に対する教育・研修の実施について、「実施されていない」との回答が50.7%、「実施されているが、充実していない」との回答が29.8%あった一方、「実施されており、充実している」との回答は2割以下(19.5%)でした。シニア人材の職務の検討やモチベーション維持・向上を考えるにあたり、この点はもっと重視する必要があるかもしれません。
日本の労働力人口が減少していくと推計されているなか、シニア人材への対応をきちんと考えることは、会社の成長にもつながる前向きな話なのです。
【パーソル総合研究所 「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」】
https://rc.persol-group.co.jp/news/202105281100.html
復職後の就労継続率に大きな違いが!
リワークプログラムを上手に利用しましょう
増え続ける精神疾患、コロナの影響も……
精神疾患の患者数は年々増え続けています。特に昨今、新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの人がメンタルヘルス不調になっており、日本うつ病学会では、感染への恐怖、社会的な役割の喪失、自分自身への無力感、孤立や偏見、他者に感染させる不安、経済的な困窮、制限や自粛への怒りなどといったストレス要因から、その数は今後も増えていく可能性があると指摘しています。
すでに多くの企業では、精神疾患により休職した従業員が生じた場合の対策も講じられているところかと思いますが、改めて、自社の制度や運用について見直しておくことが必要です。
リワークプログラムの利用が有効
休職した従業員の職場復帰に際しては、リワークプログラム(復職支援プログラム/職場復帰支援プログラム)を経ることとするのが有効です。
リワークプログラムを利用した群と利用しなかった群について、復職後の就労継続率を比較したところ、復職後1,000日時点で、利用した群の継続率が7割弱だった一方、利用しなかった群は2割弱だったという調査結果があります。また、プログラムを利用した人に比して、非利用者の再休職のリスクは1.89倍でした。復職を考え始めた従業員には、プログラムの利用を勧めたいものです。
活用を検討したい「医療リワーク」
近時関心が高まっているのは、医療機関で実施する「医療リワーク」です。再休職の予防を最終目標として、働き続けるために病状の回復と安定を目指した「治療」として行われるものであり、診療報酬上の枠組みで、医師や看護師、精神保健福祉士、作業療法士、心理職など他職種の医療専門職による医学的リハビリテーションとして実施されます。
プログラムを受けるためには転医が必要な場合があるなど、制約が生じることもありますが、復職後のうつ病再発予防に有効とされています。上手に活用していただき、スムーズな復職とその後の就労継続につなげましょう。
夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定に新基準
厚生労働省から新基準が公表されました
厚生労働省から、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(令和3年4月30日保保発0430第2号・保国発0430第1号)」という通知が出されました(5月12日)。これにより、夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について、これまでの通達(昭和 60 年6月13日付保険発第66号・庁保険発第22号通知)が廃止され、新たな基準が適用されます(令和3年8月1日より)。
背景
令和元年に成立した健康保険法等の一部を改正する法律(令和元年法律第9号)の附帯決議で、「年収がほぼ同じ夫婦の子について、保険者間でいずれの被扶養者とするかを調整する間、その子が無保険状態となって償還払いを強いられることのないよう、被扶養認定の具体的かつ明確な基準を策定すること」とされ、これを踏まえたものです。
夫婦とも被用者保険の被保険者の場合の取扱い(新基準)
基準には、「夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合の取扱い」、「主として生計を維持する者が健康保険法第 43 条の2に定める育児休業等を取得した場合の取扱い」などが定められています。ここでは、「夫婦とも被用者保険の被保険者の場合の取扱い」の新基準をみてみます。
(1) 被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。
(2) 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
(3) 夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者とすべき者に係る扶養手当又はこれに相当する手当の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない。なお、扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはできない。
(4) 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、加入者の標準報酬月額、届出日及び決定日を記載することが望ましい。被保険者は当該通知を届出に添えて次に届出を行う保険者等に提出する。
(5) (4)により他保険者等が発出した不認定に係る通知とともに届出を受けた保険者等は、当該通知に基づいて届出を審査することとし、他保険者等の決定につき疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した他保険者等と、いずれの者の被扶養者とすべきか年間収入の算出根拠を明らかにした上で協議する。この協議が整わない場合には、初めに届出を受理した保険者等に届出が提出された日の属する月の標準報酬月額が高い方の被扶養者とする。
標準報酬月額が同額の場合は、被保険者の届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。なお、標準報酬月額に遡及訂正があった結果、上記決定が覆る場合は、遡及が判明した時点から将来に向かって決定を改める。
(6) 夫婦の年間収入比較に係る添付書類は、保険者判断として差し支えない。
【厚生労働省「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」PDF】
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210512S0010.pdf
定年65歳に引上げへ 改正国家公務員法案の概要
今通常国会において、国家公務員の定年を65歳までに引き上げる改正国家公務員法が可決・成立しました(施行は2023(令和5)年4月1日)。法案の概要は次のとおりです。
定年の段階的引上げ
現在、国家公務員の定年は60歳ですが、2023年度から2年ごとに定年年齢を1歳ずつ引き上げ、2031年度には65歳にします。
現行 (2022年度まで) |
2023年度~ 2024年度 |
2025年度~ 2026年度 |
2027年度~ 2028年度 |
2029年度~ 2030年度 |
2031年度~ | |
定年年齢 | 60歳 | 61歳 | 62歳 | 63歳 | 64歳 | 65歳 |
なお、地方公務員、検察官、自衛隊の事務官等についても同様に引上げとなります。
「役職定年制」の導入
60歳で原則として管理監督職から外す「役職定年制(管理監督職勤務上限年齢制)」が新たに取り入れられます。管理監督職の職員は、60歳(事務次官等は62歳)の誕生日から同日以後の最初の4月1日までの間に管理監督職以外の官職に異動となります。ただし、公務の運営に大きな支障が生じる場合は引き続き管理監督職を担える特例を設けます。
60歳に達した職員の給与
60歳以上の職員の給与は、当面はそれまでの水準の7割程度となります。また、定年が65歳になる2031年度までに給与制度を改定し、賃金の急激な落ち込みを緩和するとしています。
高齢期における多様な職業生活設計の支援
60歳以後定年前に退職した職員は、当分の間、「定年」を理由とする退職と同様に退職手当を算定します。また、本人の希望により、短時間勤務の官職に採用(任期は65歳まで)することができる再任用制度を設けます。民間企業に倣い柔軟な勤務形態が可能になります。
今回の改正により、国家公務員は、65歳までの定年延長、また、60歳以降の短時間勤務が可能となりました。民間企業でも、先に改正された高年齢者雇用安定法に対応した雇用戦略や賃金設計を行い、環境を整えていくことが求められます。
7月の税務と労務の手続[提出先・納付先]
12日
○ 健保・厚年の報酬月額算定基礎届の提出期限[年金事務所または健保組合]<7月1日現在>
○ 源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
○ 特例による源泉徴収税額の納付<1月~6月分>[郵便局または銀行]
○ 雇用保険被保険者資格取得届の提出[公共職業安定所]<前月以降に採用した労働者がいる場合>
○ 労働保険の今年度の概算保険料の申告と昨年度分の確定保険料の申告書の
提出期限<年度更新>[労働基準監督署]
○ 労働保険料の納付<延納第1期分>[郵便局または銀行]
15日
○ 所得税予定納税額の減額承認申請<6月30日の現況>の提出[税務署]
○ 障害者・高齢者雇用状況報告書の提出[公共職業安定所]
8月2日
○ 所得税予定納税額の納付<第1期分>[郵便局または銀行]
○ 労働者死傷病報告の提出[労働基準監督署]<休業4日未満、4月~6月分>
○ 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
○ 健康保険印紙受払等報告書の提出[年金事務所]
○ 労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]
○ 外国人雇用状況の届出(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>[公共職業安定所]
○ 固定資産税・都市計画税の納付<第2期>[郵便局または銀行]
※都・市町村によっては異なる月の場合がある。