2015年下期の年金動向まとめ
●事務ミスによる国民年金減額に救済制度創設へ(10月21日)
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厚生労働省は、年金事務所や市区町村などで国民年金の事務処理や説明にミスがあり、本来の受給額よりも少なくなったり、無年金になったりした人を対象にした救済制度の案をまとめました。証拠をもとに保険料の後払いや免除の申請を認める内容で、来年4月より運用を開始する方針です。
●年金の不正受給 対応の遅れにより大半が時効に(11月13日)
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死亡した受給者を装う年金の不正受給が相次いで判明している中、対応の遅れから時効によって返還請求できないケースも多いことがわかりました。2010年7月に発覚した事件後に厚生労働省が実態調査に乗り出し、日本年金機構が開示した資料によりますと、2012~2014年度の3年間で計2億円近くを不正受給と認定して返還請求していますが、2014年度末までに回収できたのは18%にとどまっています。
●低所得の年金受給者に給付金支給を検討(11月14日)
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財務省と内閣府、厚生労働省が、低所得の年金受給者に1人あたり5,000円の給付金支給を検討していることがわかりました。2015年度の補正予算に盛り込む方針で、対象は住民税の支払いを免除されている世帯のうち基礎年金や障害年金などの受給者で、1,000万人規模となる見通しです。
●年金の納付時効を廃止(11月24日)
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政府は、2016年4月から、日本年金機構や厚生労働省などの事務処理ミスで未納となった国民年金保険料の納付時効(2年)を廃止し、すべての未納期間の後払いを可能にすることを決めました。
ミスを指摘して救済を申し立てた場合、日本年金機構が内部資料を点検し、90日以内に結論を出すしくみで、制度の公平性や信頼性を高めるねらいがあります。
●国民年金「後納特例制度」の利用が低調(12月2日)
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無年金者や低年金者の救済策として今年9月まで3年間実施された国民年金後納制度の利用者が約116万人(対象の5.8%)にとどまり、国の想定(200万人)を大きく下回ったことがわかりました。対象者が期間内に保険料を支払う経済的余裕がなかったことなどが理由とみられます。
●高年齢雇用継続給付と年金の併給調整めぐり総務省があっせん(12月11日)
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総務省行政評価局は、「いったん雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金を受けると、その後受給をとりやめても特別支給の老齢厚生年金は支給停止のままとなることに納得できない」旨の行政相談を受け、行政苦情救済推進会議の「給付金を受けない意思がある場合は、特別支給の老齢厚生年金の一部支給停止を速やかに解除するように措置を講ずる必要がある」等の意見を踏まえ、厚生労働省に対し改善を求めるあっせんを行いました。同省は応じる方針です。
●医師団体が「障害年金ガイドライン案」の見直しを申入れ(12月13日)
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障害年金の支給・不支給判定に関するガイドライン案について、全国の精神科医でつくる「精神科七者懇談会」は、障害基礎年金を受給している精神・知的・発達障害者の約1割が支給停止・減額になるおそれがあるとの推計を取りまとめ、厚生労働省に柔軟な対応を申し入れました。同省では新しいガイドラインを来年1月から導入する方針でしたが、見直しを求める声の高まりを受け一部修正を検討しており、導入は来春にずれ込む見通しとなっています。
●公的年金の年金総額が過去最高に(12月22日)
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厚生労働省が「平成26年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」を公表し、公的年金制度の受給者数(のべ人数)が6,988万人(前年度末比2.8%増)で過去最多、年金総額が53兆4,000億円(同1.1%増)で過去最高となったことがわかりました。加入者数は6,713万人(同0.1%減)となりました。
●厚年加入資格あるのに国年加入が約200万人 厚労省推計(12月29日)
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厚生労働省は、厚生年金の加入資格があるにもかかわらず国民年金に加入している人が約200万人いるとする推計結果を発表しました。昨年10月から今年3月にかけて約6万2,000人を対象に調査を実施し、約2万3,000人から回答を得ていました。同省では、雇用主が厚生年金の加入逃れをしているケースがあるとみています。
●届出なく死亡・不明者に年金支給 322件(12月25日)
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厚生労働省は、死亡したり行方不明になっていたりしたにもかかわらず、届出がないために親族などが公的年金を不正受給していたケースが322件あったことを発表しました。日本年金機構は、死亡が確認された233件については過払い分の返還を求め、不正受給と認定した27人を刑事告訴し、25人が逮捕されました。
●2016年度の年金額は据置きへ 厚労省方針(12月26日)
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2016年度の年金支給額が今年度と同じになる見通しとなりました。年金の支給額は物価や賃金の動向に応じて見直されるのですが、厚生労働省によると、今年10月までの物価上昇率を通年に換算するとプラス0.8%で、賃金上昇率はマイナス0.2%。物価がプラスでも賃金がマイナスだと改定率はゼロにするルールがあるため、来年度予算案で改定率はゼロ とされました。