2017年下期の年金動向まとめ

2021-02-27

2018年度税制改正でサラリーマン・年金受給者の控除見直し検討へ(12月)

◆税制改正大綱策定に向け議論スタート

自民党税制調査会は11月7日に幹部会合を開き、22日頃から本格的な議論を始め、12月14日に税制改正大綱をまとめるスケジュールを確認しました。

昨年来テーマとして挙げられている所得税の抜本改革に向けて、高所得の会社員や年金受給者に対する所得税を増税し、低所得の若者やフリーランスの人たちの税負担との公平性などを図る案などが出ています。

 

◆誰でも受けられる「基礎控除」を所得の多寡に応じて調整?

現在の「基礎控除」は、収入の額や扶養家族の人数等に関わりなく、一律38万円が収入から差し引かれて所得税額が計算されます。

控除額を上積みする一方、高所得者の控除額を段階的に減らす仕組みを導入する案などが上がっています。

 

◆会社員向け「給与所得控除」縮小で自営業者との不公平感解消?

「給与所得控除」は、会社員の収入の一部を経費とみなし、収入の額に応じて一定額を差し引いて所属税額を計算する仕組みです。現行の「年収1,000万円超で220万円」について、「年収800万円で200万円」を上限とする案があります。

また、自営業者やフリーランスで働く人たちには恩恵が及ばない制度であるため、働き方によって税負担に差が出ないように見直すべきとの意見もあります。 

 

◆給与と年金両方もらっている人は「公的年金等控除」が使えなくなる?

「平成28年版高齢社会白書」によれば、60~64歳男性で就業している人の割合は77.1%で、13年連続で増加し過去最多となっています。

つまり、年金をもらいながら働く人も増えていますが、これらの人は給与所得控除と、公的年金や企業年金に対する控除である「公的年金等控除」の、二重の適用が受けられます。

そのため、1,000万円超の年金収入がある人の控除額を頭打ちにしたり、高額な報酬を得ている年金受給者が両方控除を受けられる仕組みを改めたりする案が挙がっています。

 

日本年金機構が遺族年金18億円を過払い!(12月)

◆会計検査院の調査で明らかに

国民年金や厚生年金の加入者が亡くなった時に遺族が受け取る「遺族年金」について、会計検査院が調べたところ、受給資格を失っていた約1,000人に対し、日本年金機構が約18億円を過払いしていたことがわかりました。

会計検査院は、日本年金機構に返還手続をとらせるよう厚生労働省に求める方針ですが、約8億円分は返還を請求できる権利の時効(5年)が成立しており、返還は見込めないようです。

 

◆受給資格は?

遺族年金には、国民年金に加入していた人が亡くなった場合などに受け取れる「遺族基礎年金」と、厚生年金保険に加入していた人が亡くなった場合などに受け取れる「遺族厚生年金」があります。支給対象者は前者が「子どもがいる配偶者」か「子ども」、後者は「妻」「子どもと孫」「55歳以上の夫・父母・祖父母」です。

夫を亡くした妻が再婚するなどして遺族年金の受給資格を失った場合には、年金事務所に届け出る必要があります。

 

◆一部の資格喪失者に喪失後も支払い

今回、2014~2016年度に資格を失ったと届け出た約2,700人について会計検査院が調べたところ、届出が期限を過ぎていた約950人に約17億円が過大に支払われていました。

このほか、受給者7,000人のサンプル調査の結果、受給資格を失っていたことを届け出ていない人が二十数人いて、約1億6,000万円が過大に支払われていました。

中には、資格を失った人に50年以上も支給していたケースもあったそうです。

 

◆時効未成立分は受給者に返還請求

年金事務所は、失権届の記載内容を住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)や戸籍と照合しておらず、受給資格の喪失時期の確認を怠っていました。会計検査院は、日本年金機構に時効が成立していない分の返還手続を取らせるとともに、受給資格の確認を徹底するよう、厚生労働省に求める方針です。

同省は「今後は適切に処理するよう年金機構に指示している」としていますが、すでに支払ってしまった分の回収は困難なものになりそうです。

 

国民年金加入者の海外転居手続を簡素化へ(11月)

厚生労働省は、国民年金法に基づく省令を改正し、国民年金の加入 者が海外に転居する場合の手続きを簡素化し、保険料引落し口座の申請について原則2019年から不要とする方針を明らかにしました。これ により、海外に居住地を移す場合の任意加入手続で必要な2種類の書類の提出が不要となります。

 

マイナンバーと年金情報の連携 3月から順次導入へ(11月)

政府は、日本年金機構と自治体がマイナンバーを使った個人情報の共有を可能とする政令を閣議決定しました。年金事務所での手続き で課税証明書などが不要になったり、自治体で各種手当の申請を行う際にも年金書類が不要になったりします。来年1月から稼働テストを開始し、3月から順次導入する考えです。

 

年金受給開始を70歳以後まで選択可能に ~政府有識者会議が提言(10月)

◆年内に「高齢社会対策大綱」策定

内閣府の「高齢社会対策の基本的考え方等に関する検討会」は、公的年金の受給開始年齢を70歳以降まで繰り下げることを可能とする仕組みづくりなどを盛り込んだ報告書の骨子案をまとめました。

政府はこの骨子案をもとに、年内に中長期的な高齢者施策の指針となる「高齢社会対策大綱」の改定案を閣議決定する予定です。

 

◆「エイジレス社会」実現へ

年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、現行法では60~70歳の間で開始年齢について、「繰上げ」もしくは「繰下げ」ができます。

開始年齢を早めれば65歳から受給するのに比べて受給額が最大で30%減り、遅くすれば最大42%増えます。

骨子案では、「基本的考え方」として、「すべての高齢者が意欲・能力を活かして活躍できるエイジレス社会を目指す」とし「年齢区分で人々のライフステージを画一化することを見直すことが必要」だとしました。

そのうえで、「意欲ある高齢者が働き続けられ、また、就業できる仕組みを構築していくことが基本」とし、あわせて「高齢期の低所得を防止する視点も望まれる」としています。

 

◆高齢者のコミュニティづくりや資産活用も提言

骨子案ではこのほか、地域社会における高齢期の生活基盤を安定させるためのコミュニティづくりや、高齢者の資産を豊かな老後と日本の経済成長につなげる効率的な運用ができるよう環境整備が必要との報告も盛り込まれました。

 

◆導入の是非をめぐって議論本格化か

年金の受給開始年齢引上げをめぐっては、2014年に当時の田村憲久厚生労働大臣が「75歳程度まで引き上げることを検討する」と発言しましたが、その後具体的な議論とはなっていませんでした。

ただ、少子高齢化で労働力人口が減るなか、政府は多くの高齢者に働き続けてもらいたい考えで、自民党の「一億総活躍推進本部」が5月にまとめた提言にも年齢引上げが盛り込まれています。

今回は議論が本格化する可能性があり、導入の是非をめぐっては議論となりそうです。

 

従業員が「iDeCo」に加入する際に事業主が行わなければならない事務手続とは?(10月)

 

◆改正を契機に加入者数が増加

今年1月からの改正確定拠出年金法の施行により、個人型確定拠出年金(通称:iDeCo)は、基本的に20歳以上60歳未満のすべての方が任意で加入できるようになりました。

この改正により、今年に入ってから加入者が大幅に増加しており、平成29年6月時点における加入者数は54万9,943人(前年同期比203.8%)となっています。

 

◆iDeCoの仕組み

iDeCoは、公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金の1つであり、加入者の老後の所得確保の一助となる制度です。

加入者が自ら定めた掛金額を拠出・運用し、原則60歳以降に、掛金とその運用益の合計額をもとに給付額が決定し、給付を受ける仕組みとなっています。

 

◆事業主が行わなければならない事務手続は?

企業で働く従業員がiDeCoに加入する際、事業主が行わなければならない事務手続が発生しますが、そのポイントは以下(1)~(5)の通りです。

厚生労働省では、従業員がiDeCoへの加入を希望した場合に速やかに加入できるよう、事業主への協力を呼びかけています。

(1) 事業所登録

加入者となる従業員(2号被保険者)を使用する事業所は、国民年金基金連合会(国基連)に事業所登録を行います。

(2) 事業主証明書の記入

加入を希望する従業員から提出される事業主証明書に必要事項を記入します。

(3) 事業主証明(年1回)

年に1回、国基連が加入申出時に得た情報をもとに、加入者の勤務先に資格の有無の確認を行いますが、その際に事業主の証明が必要となります。

(4) 事業主払込の場合の掛金納付

加入者が事業主払込を希望する場合、事業主から国基連に掛金を納付します。

(5) 年末調整

所得控除があるため、加入者が個人払込を選択した場合は年末調整を行います。

 

中小企業におけるパート労働者の年金加入数が明らかに(9月)

厚労省の発表により、500人以下の中小企業で働くパート従業員らの厚生年金への加入状況について、全国1,270の事業所で、計1,742人の従業員が加入していることが明らかになりました(6月末現在の速報値)。

 

年金加算金598億円の支給漏れ(9月)

元公務員の妻らを対象にした、基礎年金に一定額を上乗せする「振替加算」について、1991年以降、10万5,963人分、金額にして計約598億円の支給漏れがあったと、厚労省は発表しました。

年金機構と共催組合の連携不足が主な原因とされており、未払い額としては、過去最大規模となります。11月中旬に全額が支払われる予定です。

 

タクシー会社の厚生年金保険料の徴収逃れ 6,000万円超(9月)

東京都内のタクシー会社が、海外に設立したダミー会社を利用して厚生年金保険料の徴収を6,000万円超免れていたことが明らかになりました。

同社は香港に別法人を作り従業員を転籍させ、そこから都内の会社へ出向させる形をとっていたが、香港法人での勤務実態はなかった。厚生労働省は同様の事例があるとみて各年金事務所に調査を指示しました。

 

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Posted by スタッフ