平成30年11月事務所だより
10月は「年次有給休暇取得促進期間」です
◆「年次有給休暇取得促進期間」とは
厚生労働省は、年休を取得しやすい環境整備を推進するため、次年度の年休の計画的付与制度について労使で話し合いを始める前である10月を「年次有給休暇取得促進期間」として、全国の労使団体に対する周知依頼、ポスターの掲示、インターネット広告の実施など、集中的な広報活動を行って、計画的付与制度の導入を促進しています。
◆「働き方改革法」成立で年休5日の強制付与が義務化
「働き方改革関連法」成立に伴う労働基準法の改正により、平成31年4月から、使用者は、年10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、毎年5日間について、時季を指定して年次有給休暇を与えることが必要となりました(ただし、計画的付与制度などにより、労働者がすでに取得した年次有給休暇の日数分は、時季指定の必要がなくなります)。
◆年休取得率の低迷が背景
これは、年次有給休暇の取得率が低迷していて、いわゆる正社員のうち約16 %が年次有給休暇を1日も取得しておらず、また年次有給休暇をほとんど取得していない労働者については長時間の比率が高い実態にあることを踏まえ、年5日以上の年次有給休暇取得が確実に進む仕組みを導入することとしたものです。年次有給休暇については、ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議において策定された「仕事と生活の調和推進のための行動指針」において、2020年までにその取得率を70%とすることが目標として掲げられています。
◆厚労省がリーフレット作成
厚生労働省は、作成したリーフレットのなかで、「計画的付与制度の活用」「チームのなかで情報共有を図っての休みやすい職場環境づくり」「土日祝日にプラスワンした連続休暇取得の促進」などを掲げ、その具体的な手法と効果を紹介しています。来年度になって慌てて対策を講じなくてすむよう、いまから具体的な制度設計と運用方法を検討しておきましょう。
【厚生労働省「年次有給休暇取得促進」事業主向けホームページ】
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/
bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/sokushin/jigyousya.html
「働き方改革法」に対する企業の意識~エン・ジャパン株式会社の調査から
人材採用・入社後活躍のエン・ジャパン株式会社は、人事担当者向けの総合情報サイト「人事のミカタ」上で、経営者や人事担当者を対象に「働き方改革法案について」アンケート調査を行いました(回答者648名)。それを基に、企業が「働き方改革法案」に対してどこまで認識があるか、またどう感じているかの実態を紹介します。
◆調査結果の概要
1 「働き方改革法案」の認知度
「働き方改革法案」を知っているかという質問に対して、「概要を知っている」(74%)、「内容を含め知っている」(21%)と、認知度は95%に達しています。
2 経営への支障度合
次に、「働き方改革法案」が施行されることで経営に支障がでるかという質問に対しては、「大きな支障が出る」(9%)、「やや支障がでる」(38%)とあり、企業規模が大きくなるにつれて「支障がでる」と回答する割合が増加しています。
3 経営に支障が出そうな法案について
「経営に支障がでる」と回答した方に、「支障が出そうな法案はどれか」という質問に対しては、「時間外労働(残業)の上限規制」(66%)が最も多く、次に「年次有給の取得義務化」(54%)、「同一労働同一賃金の義務化」(43%)と続きます。
また、業種別に見ると、広告・出版・マスコミ関連の「時間外労働の上限規制」(80%)、「年次有給取得の義務化」(70%)、商社の「時間外労働の上限規制」(74%)が目立っています。
◆回答者の声
働き方について日本は他国よりも遅れていて、各人が家庭の状況や自身の体調・結婚や出産などを抱えて仕事をしているのだから、国が柔軟に対応して働き方が多様化することは多くの問題が解決することにつながるといった意見や、中小企業にとっては厳しいところがあるもしれないが、従業員にとっては良い制度と肯定的な意見があります。
一方で、能力差があると思われる職場で同一労働同一賃金は判断が難しい、残業の上限や有給を義務化したら生産性が下がる、生産性が下がる分人を増やしたら人件費が上がる、コスト削減のための無理な施策を考えてしまうのではないかと否定的な意見もあります。
【エン・ジャパン「企業に聞く「働き方改革法案」実態調査」】
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2018/14941.html
就労証明書 マイナポータルで電子化
◆これまでは人事担当者が手書きで作成
「就労証明書」は、「就労(働いていること)の事実」を証明する書類で、市区町村に対し、認可保育所等の入所を申し込む際に添付が必要となります。企業で働いている方の就労証明書は、企業(の人事担当者)が、作成します。自営業者の場合は、代表者が作成します。
これまでは、保育所入所を希望する個人が市区町村ごとに様式の違う証明書を役所や自治体のホームページから取り寄せる必要がありました。入手した書類を勤務先の企業に送り、受け取った企業の人事担当者が手書きで記入して個人に送り返します。個人は証明書を自治体の窓口に持参するか、郵送していました。
◆電子化により作業が効率化
10月1日からマイナポータル(ぴったりサービス)に「就労証明書作成コーナー」が開設されました。
内閣府によると、「就労証明書作成コーナー」のメリットとして、
① 就労証明書の様式が「かんたん入手」できる
② 就労証明書を手書きでなくキーボード入力で「らくらく作成」できる
③ 役所に赴くことなく「すすっと電子申請」できる
ことが挙げられています。
具体的には、まず個人が証明書を自治体から取り寄せる必要がなくなります。勤務先の企業に依頼すれば、企業の人事担当者はマイナポータルの就労証明書作成コーナーで、市区町村の様式を検索して、証明書のひな形を直接入手できるようになります。人事担当者が必要事項を記入するのもパソコンでできるため、従来の手書きに比べて効率が上がります。個人から市区町村へ就労証明書を提出するのも、パソコンやスマートフォンでできるようになります。
証明書には社印が必要なため、企業が個人に送る際は紙で郵送します。個人が市区町村に証明書を提出する際は証明書の写真を撮ってマイナポータルに添付するだけで済みます(別途、「紙(社印を押印)」の証明書の提出を要する市区町村もあります)。
なお、電子申請には、マイナンバーカードとICカードリーダライター、または対応済みのスマートフォンが必要な場合があります。また電子申請に対応していない市区町村もありますが、今後利用できる自治体は増えていく見通しです。
「雇用関係助成金」の郵送受付が可能になりました!
◆郵送受付が可能に
10月1日より、「雇用関係助成金」(厚生労働省)関連書類の郵送受付が開始されました。雇用関係助成金の計画書や申請書類等の郵送が可能になったことで、事業者の利便性向上が期待されます。
◆郵送にあたっての注意点
郵送にあたっては、注意すべき点もあります。
① 郵送事故防止のため、簡易書留等、必ず配達記録が残る方法で郵送すること
② 郵送の場合、申請期限までに到達していること
③ 書類の不備や記入漏れがないよう、事前によく確認すること
原則として、提出された書類により審査が行われるため、計画書や申請書の作成方法等が不明な場合は、これまで通り、持参による窓口で受付するのがよいかもしれません。
◆書類不備防止のためにはチェックリストで確認を!
郵送受付開始に伴い、「計画届・申請書等チェックリスト」が公表されています。書類の不備を防止するためのものです。
チェックリストは各助成金共通のものと各助成金それぞれについてのものがあります。すべてエクセルデータで作成されており、「申請様式番号・様式名」「添付書類(確認書類)」「備考」「掲載URL等」が一覧になっています。
各助成金には、労働移動支援助成金や特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、地域雇用開発助成金、障害者雇用安定助成金、人材確保等支援助成金、キャリアアップ助成金などがあり、コースごとにチェックリストが出されています。
チェックリストは、基本的な様式や添付書類をリスト化したものであるため、「ここに掲載したもの以外であっても、都道府県労働局が審査にあたって求めた書類は提出の必要があります。」といった注意書がありますが、書類不備で不支給になることがないよう、事前にチェックリストで確認したうえで、郵送するようにしましょう。
【厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/
bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html
高齢者の就業者数が過去最高に~総務省調査より
◆高齢者の就業者数が807万人と過去最高に
総務省は、「敬老の日」(9月17日)にあたって、「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」として、統計からみた我が国の65歳以上の高齢者についての取りまとめを公表しています。
取りまとめによれば、高齢者の就業者数は14年連続で増加しており、807万人と過去最多だそうです。また、就業者数増に占める高齢者の割合も、12.4%と過去最高となっています。高齢就業者数は、「団塊の世代」の高齢化などを背景に2013年以降大きく増加していますが、「団塊の世代」が70歳を迎え始めたことなどにより、70歳以上で主に増加しているようです。
◆高齢者就業者は「卸売業、小売業」「農業、林業」などで多い
高齢就業者が多い業種としては、主な産業別にみると、「卸売業、小売業」が125万人と最も多く、次いで「農業、林業」が99万人、「製造業」が92万人、サービス業(他に分類されないもの)」が91万人となっています。なお、各産業の就業者総数に占める高齢者の割合をみると、「農業、林業」が49.3%と最も高く、次いで「不動産業,物品賃貸業」が24.0%、「サービス業(他に分類されないもの)」が21.2%となっています。
特に「農業、林業」「製造業」などは、かねてより高齢化の進展が指摘されている業界です。
◆これからも増加が予想される高齢就業者
国際比較でみても、日本の高齢者人口の割合は、世界最高となっており、高齢者の就業率も23.0%と、主要国の中で最も高い水準にあるそうです。この傾向は今後も加速することが予想されます。
調査によれば、高齢雇用者の4人に3人は非正規の職員・従業員となっており、高齢者の非正規の職員・従業員は、10年間で2倍以上に増加しているといいます。
今後も、企業としては、高齢者の雇用に関する諸問題には注視していきながら、適切な対応をしていきたいところです。
【総務省「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」】
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1130.html
従業員の通勤事故リスク、対策を取っていますか?
◆会社が通勤時の事故発生をめぐり責任追及されるケースが増加
10月1日、事故死したトラック運転手の遺族が、原因は過重労働だとして会社に約1億円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
同様に、通勤途中で発生した事故をめぐり会社が責任追及されるケースが増えています。
◆上司も書類送検されたケース
2017年10月、業務で公用ワゴン車を運転中に兵庫県川西市選挙管理委員会の職員が5人を死傷させる事故が発生しました。職員は、当時、参議院選挙対応で約1カ月間休みがなく、200時間超の時間外労働を行っていました。2018年4月23日、運転していた職員は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)で書類送検され、また過労状態を知りながら運転を命じたとして、上司も道路交通法違反(過労運転下命)で書類送検されています。
◆裁判で和解が成立したケース
2018年2月8日、横浜地方裁判所川崎支部において、ある事件の和解が成立しました。この事件は、バイクで帰宅途中に居眠り運転で事故死した従業員の遺族が、原因は過重労働だとして会社に損害賠償を求めたもので、会社が7,590万円支払うこととなりました。従業員は約22時間の徹夜勤務明けで、事故前1カ月の時間外労働は約90時間でした。
◆裁判官は通勤中の会社の安全配慮義務に言及
上記事件で、裁判所は、通勤時にも会社は社員が過労による事故を起こさないようにする安全配慮義務があると認定し、公共交通機関の利用を指示するなどして事故を回避すべきであったと指摘しています。
和解の内容には、再発防止策として勤務間インターバル制度の導入、男女別仮眠室の設置、深夜タクシーチケットの交付などの実施も盛り込まれました。これまで通勤中の事故で会社の責任を認めたものはほとんどなかったため、会社の安全配慮義務が従業員の通勤についても認められることを示した画期的な判断とされています。
◆「労働時間把握」だけではリスクを回避できない
働き方改革法では、労働時間把握が使用者の義務として課されることとなりました。
しかし、会社に求められるのは、省令に定める方法により労働時間を記録等するだけでなく、過労状態で従業員が事故を起こさないような具体的対策を講じることであると認識する必要があるでしょう。
限定正社員の導入状況
◆20.4%が導入
「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」(労働政策研究・研修機構)の結果をみると、企業の20.4%で限定正社員がおり、導入による効果も上がっているようです。
限定正社員とは、ここでは勤務地、職務、労働時間等が限定されている正社員のことですが、実際には、勤務地の限定(転勤の制限)が最多で82.7%を占めています。
◆導入の効果
限定正社員という働き方を導入した企業では、人材定着率の向上(54.7%)が社員のワーク・ライフ・バランスの向上(49.7%)、人材採用がしやすくなった(48.9%)、社員のモチベーションアップ(35.9%)、社員の労働生産性の向上(34.2%)、社員の専門性の向上(30.1%)といった効果を感じています。
◆限定正社員の不満
会社側としては一定の効果がある限定正社員。社員側でも制度に不満の「ない」人が61.2%と、不満の「ある」(31.1%)を上回っています。
一方で、不満な点(複数回答)としては、「不合理な賃金差」が最多で56.6%を占めています。これは、情報共有の不徹底(36.8%)、不合理な昇進スピードの差(33.5%)等に比べると、かなり多くなっています。
基本給の差の設定については、「いわゆる正社員のほうが高い」とする割合が58.4%を占めていますが、「差はない」も39.4%となっています。いわゆる正社員のほうが高い場合、限定正社員の基本給を「8割超~9割以下」とする割合が最も多く、43.0%となっています。
限定正社員については、いわゆる正社員との間の転換をどうするか等の制度設計も気になるところですが、従業員間の賃金に差をつけるには理由が必要であり、それは合理的なものでなければならず、従業員に対して明確に説明できる必要があります。「合理的な賃金差」は、今後の労務管理においてより一層気をつけたいポイントとなるでしょう。
【労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」(PDF)】
http://www.jil.go.jp/press/documents/20180911.pdf
寒い時期こそ「湿度」に要注意!
◆オフィス環境と温湿度
オフィス環境については事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号)で定められており、温湿度に関しては、「事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が17度以上28度以下及び相対湿度が40パーセント以上70パーセント以下になるように努めなければならない。」とされています(第5条第3項)。
室温に関してはクールビズ・ウォームビズ等の取組みにより多くの方が意識するようになりましたが、一方で、相対湿度についてはあまり関心が持たれていないのが現状のようです。特に冬季において「40%以上」の基準を満たしていない状況が多く見られるということが従来から報告されています。
◆低湿度(乾燥)による悪影響
冬季は、皮膚の乾燥・かゆみ、のどの痛み・乾燥、くしゃみ・せき、鼻水・鼻づまりといった体調不良を訴える方が多くなりますが、これらはオフィスの乾燥が一因となっているものと考えられます。
また、湿度が低すぎると作業効率が悪化するとの実験結果もあります(堤仁美「低湿度環境が在室者の快適性・知的生産性に与える影響に関する研究」(2004年))。例えば、湿度が35%以下になると、目の乾燥によりまばたきの回数が増え、視覚によるデータ収集が必要なタスクにおいて大きく継続的な負の影響がみられるそうです。
◆オフィスでの対応
一方で、同研究において、特に冬場は、比較的湿度が高いほうがより良いパフォーマンスが見られるとの結果も出ており、オフィス空間の湿度への対応の必要性が明らかとなっているといえるでしょう。
まずは、オフィス空間の湿度の状況と、乾燥による健康への悪影響が生じていないかを確認してみてください。湿度基準が満たされていないようであれば、冬を迎える前に対策が必要です。
加湿器は広い空間では効果を実感するのが難しいこともあります。調湿機能付きの空調システムの導入が最善といえますが、当面の対策としては、加湿器を使用するのと同時にマスクの着用によりのどを潤すといったことが有効でしょう。
「採用選考に関する指針」の廃止で今後の採用活動はどうなる?
◆2020年春入社組までは現行ルールを適用
経団連(日本経済団体連合会)は、現在の大学2年生が対象となる2021年春入社以降の就職・採用活動のルール「採用選考に関する指針」を廃止することを正式に決定しました。現行ルールでは、経団連の会員企業は会社説明会が3月1日、採用面接などの選考活動が6月1日、内定の通知日が10月1日をそれぞれ解禁日として、2020年春入社予定(現在の大学3年生)の学生まで適用することが決まっています。
政府は経団連の決定を受け、2021年春入社組(現在の大学2年生)については混乱を避けるため現在と同じ日程を維持する方針ですが、2022年以降は経団連や大学と協議をして新たなルールを作ることを検討しています。
◆指針は形骸化?
経団連の中西会長は、指針を廃止する理由として、主に次の点が挙げていました。
・指針は強制ではないため形骸化している
・経団連に加盟していない外資系やIT系の企業の採用活動は早期化している
内閣府と文部科学省が7~8月に行った就職活動に関する調査によると、経団連の指針で定める面接の解禁日を守っていない企業が62.4%(前年比3.1ポイント増)に上り、指針の形骸化が進む実態が浮き彫りになりました。
また、1953年の「就活協定」以来、就職・採用活動は早期化・長期化し、学業への影響が指摘されていました。
◆「通年採用」へ移行する企業も
近年では、「新卒一括採用」から「通年採用」へ移行する企業も増えてきています。「通年採用」は、欧米では一般的となっており、企業は年間を通じて採用活動を行っているため、既卒者や留学生など幅広く人材と獲得できるとしています。
◆今後は政府主導でルールを作成
今後は、経団連に変わって政府が主導となって就職・採用活動のルールの見直しや「新卒一括採用」のあり方について議論される方針です。採用活動のグローバル化や多様化が進む中で、企業と学生が混乱しないよう適切なルール作りが求められます。
人手不足で増えている「自己都合退職トラブル」
◆自己都合退職トラブルとは
退職の意思を会社に伝えようとする従業員に対し、会社が退職を認めないという「自己都合退職トラブル」が増加しています。「上司が面談に応じない」「退職届を受理しない」「離職票さえ渡さない」「有給休暇を取得させない」「辞めた場合は損害賠償請求すると脅迫する」などがその代表例です。
◆解雇トラブルの相談件数と逆転
昨年度、都道府県労働局および労働基準監督署に寄せられた民事上の個別労働紛争相談のうち、「自己都合退職」は2番目に多い38,954件でした。この件数は直近10年間で増え続けており、平成27年度を境に「解雇」を上回っています(厚生労働省「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)。
かつての不況下においては解雇トラブルがよくみられましたが、人手不足のいまは自己都合退職トラブルが多い時代です。この傾向はしばらく続くでしょう。
◆民法上は2週間で退職できる
労働者は法律上、期間の定めのない雇用の場合、いつでも雇用の解約の申入れをすることができます。また、会社の承認がなくても、原則として解約の申入れの日から2週間を経過したとき、雇用契約は終了します(民法627条1項)。
就業規則の「退職」の項目においては、業務の引継ぎ等の必要性から、「退職希望日の少なくとも1カ月前に退職届を提出」等と規定することも多いですが、この規定のみを理由に退職を認めないということはできません。
◆従業員の退職でもめないために
一度退職を決意しその意思を表明している従業員に対し、慰留・引き留めを行ったところでさほど効果はないものですし、度を過ぎれば前述のような法的案件にもなりかねません。くれぐれも感情的な対応はせず、淡々と引継ぎや退職手続をさせましょう。
最近では、「退職代行ビジネス」とわれる、民間企業が本人に代わって退職手続を行うサービスを利用して、会社との自己都合退職トラブルを防ぐ退職者も増えています。この場合、本人と面と向かうことなく、会話もないまま退職が完了してしまいます。
従業員が自己都合退職に至る動機はさまざまですが、そもそも「辞めたい」と思わせない会社づくりも大切です。
11月の税務と労務の手続[提出先・納付先]
12日
- 源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
- 雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>
- [公共職業安定所]
- 労働保険一括有期事業開始届の提出<前月以降に一括有期事業を開始している場合>
- 15日
- [労働基準監督署]
- 所得税の予定納税額の減額承認申請書(10月31日の現況)の提出[税務署]30日
- 個人事業税の納付<第2期分>[郵便局または銀行]
- 所得税の予定納税額の納付<第2期分>[郵便局または銀行]
- 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
- 健康保険印紙受払等報告書の提出[年金事務所]
- 労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]
- 外国人雇用状況の届出(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>
- [公共職業安定所]